タクミがFXを始めたのは、なんとなく「自分でもできるかもしれない」という期待からだった。最初の数日は勝ったり負けたりを繰り返しながらも、どこかで“自分は特別な才能があるのかもしれない”と錯覚していた。だが、そんな幻想はすぐに崩れた。
ある日、ドル円が急落し、タクミは含み損を抱えたまま画面の前で固まっていた。損切りができない。戻るかもしれないという淡い期待が、彼の指を動かなくさせていた。結局、チャートは戻らず、資金の半分が消えた。布団の中で天井を見つめながら、タクミはようやく気づいた。損切りできないのは自分が弱いからではなく、どこで切るか決めていなかったからだと。
翌日から、タクミはエントリー前に損切りラインをチャートに引くようにした。線を引くと、不思議と心が落ち着いた。損切りは“決断”ではなく“作業”になり、迷いが消えた。
しかし次に待っていたのは、オーバートレードの沼だった。仕事の休憩中も、帰宅してからも、寝る前も、タクミはチャートを開いていた。チャンスを逃したくないという焦りが、根拠のないエントリーを増やしていた。勝てる時は根拠が揃った時だけだと気づいたのは、負けが続いたある夜だった。
タクミはトレード時間を1日30分に制限し、エントリー条件を3つに絞った。最初は物足りなかったが、次第に“待つこと”の大切さが分かってきた。無駄なエントリーが減り、勝率が上がり始めた。
それでもタクミは手法迷子だった。SNSで「この手法が最強!」という投稿を見るたびに手法を変えた。しかし、どれも長続きしない。ある日、彼は気づいた。手法を変えても、自分自身は変わっていないのだと。そこで1つの手法を選び、30日間検証することにした。最初の10日は負けも多かったが、続けるうちに勝ちやすいパターンや負けやすいパターンが見えてきた。手法迷子は終わった。

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